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桃枝戀実【3月のライオン】

~序~

『曄』と呼ばれる大陸があった。その大陸では大小20を超える国が興っては滅ぶことを繰り返していた。

 曄大陸の南方、海に面した地に『昌』と呼ばれる国があった。

 気候は温暖で南は海、西に穀倉地帯である白鷹平原、東は大河である青江に接し、北は鉄を産出する玄蔵山脈を擁する中堅国家であった。

 周辺諸国が『昌』の実りと鉄を求めて幾度となく攻めかかるが、それを撃退してきた尚武の国。

 もともと昌の歴代の統治者である帝は、対外的な侵攻は行わず、守りに徹していたのだが、三十八代帝に宗谷冬司が即位して以来、攻められれば反撃に転じるようになる。

 まずは東の『朔』を下した。次いで北の『燕』を滅ぼした。西の大国『菱』を飲み込み、南の海岸部だけでなく、玄蔵山脈を超えて羽飼山系までを支配下におき、西は遊牧民を中心とした商業都市国家『旋』までに領域を広げ、わずか15年で曄大陸でも南の大国の地位を築くまでになった。

 そして、『昌』が表舞台に出てきて、版図が一気に塗り替えられたのは、この国独自の軍事システムにある。

 もともと、曄大陸では【人形士】【傀儡士】と呼ばれる人型を模した人形を操る人達がいる。人と同じように動かす人形士は、労働力として人型の人形を操るが、通常一体、多くて数体動かすのが限界だ。

 だが、昌では、動きを単純化し特化させることで、二十体を動かす棋士と呼ばれる軍人がいる。槍を突き出す動きだけの歩兵、切り下ろす動きの刀兵、矢を射る弓兵、騎馬でもって一撃して離脱する騎馬兵。それぞれの動きを固定化し、81マスに区切った仮想の盤を戦場に想定することで、より単純化して兵士の人形を動かす。

 ここで恐ろしいのは、素人に毛の生えた程度の棋士でも二十体を動かすことだ。

 下位、中位、上位、地位、と上がり、天位と呼ばれる国の最高位となれば、たった一人で千体を一単位とし、おおよそ二万の兵士人形を動かせる。

 駒と呼ぶその兵士人形は、単体ではさほど強くない。熟練兵であれば倒せる程度の強度であり、強さだ。ただ、これが十人十列、五十人二十列となれば、熟練兵が数人いたところで戦況を覆すのは至難になる。

 また、人形ゆえに、駒である兵士達は補給がいらず、恐怖がなく、一晩たてば復活してしまう。

 もちろん、弱点はある。駒は棋士の意識がある間、つまり起きている間しか戦えないので、不眠不休での戦闘はできない。もちろん棋士が倒されれば、駒はうごけず、消滅する。

 同時に複数は動かせず、一部隊ずつしか動かせない。駒の行動範囲は棋士が最初に設定した仮想の81マスの盤上での動きに縛られるので、その場所を迂回しての背後や側面からの攻撃には無防備になる。

 また、広い平原での戦いは得意だが、森や山中など盤を設定しにくい土地だと駒の動きは悪くなるので、潜伏してのゲリラ攻撃には弱い。

 駒には疲労がないが、それを動かす棋士は休息を必要とする。

 だが、それらも四方陣と呼ばれる主力とその左右後方にそれぞれ棋士を複数配して別働隊や奇襲に備えることや、一隊の駒の数を減らし、波状攻撃と同時に防御陣を築くことで多少の不利は補えてしまう。

 農民を兵力として駆り出すことなく、訓練も補給も必要なく一糸乱れぬ集団戦が行える兵士が常に100万以上常駐している国。それが『昌』という国だった。

 そして、大国となった『昌』は、売られた喧嘩は買うが、自ら攻め込むことはしないという態度で、吸収した三国の鎮撫につとめていた。

 カポカポと呑気な蹄の音をたてながら、二頭の馬が街道を進む。

 その前をゴトゴトと街道をいく荷馬車には、野菜や果実が山のように積まれており、日に焼けた農民達の表情も明るい。

 荷馬車を引く馬だが、こちらは土そのもの。棋士達が操る騎馬兵の駒が荷馬車を引いている。普通の馬と違ってこれだと疲労もしないので休憩が必要なく、平時なら運送手段としてよくつかわれていたりする。 

 街道の両側には、灌漑で開かれた田畑と果樹園が広がっている。

 山に面したこのあたりは、水事情があまりよくなく、日照りが続けばすぐに作物が枯れる土地だった。だからこそ、山岳地の多い北の『燕』は凶作になると食糧を求めて周辺に戦をしかけたのだが、『昌』の支配下になってからは、棋士達が自分の駒を使って開墾と水路の拡張事業を行い、斜面には果樹を植え、農業生産を増大させて安定させた。

 駒は複雑な動きは難しいが、運搬や鍬を振り下ろす、ノコギリを引いて木を切るなど単純化した動作を繰り返すことには向いている。

 馬に乗っているのはまだ十代と思われる青年たちで、それぞれ緑色と鈍色の袍を身にまとい、髪を結っている。

 豊かな実りを見せる青々とした田畑を見ながら、彼等は嬉しそうに顔を綻ばせた。

「あ、お役人様、島田様がいましたよ」

「え?」

「島田様~都から島田様に会いたいとお役人が来られましたよ~」

「ああ?都?京か?それとも北都か?」

 農民達の呼びかけに答え、振り返ったのは畑の真ん中で、鍬を下ろして額の汗と泥を拭う壮年の男だった。

「え?島田北辺伯?天位の五席、島田北辺伯様ですか?」

「そうだが、お前は?」

 綿織の短衣を着て、首にかけた手ぬぐいで顔を拭う姿は、農民にしか見えない。

 だが、彼がこの元『燕』の大半を直轄する北辺伯にして帝である宗谷の代行者、島田開だ。

「失礼しました、僕は京の太源府より使わされました正使、中位の桐山零、後ろに控えているのは副士の二階堂晴信です」

 慌てて馬から降りた桐山が、膝をついて礼をとる。

「お久しぶりです、兄者」

「二階堂!公務!」

 同行者である二階堂が嬉し気な声をあげるのに、桐山の方が慌てた。

「おお、坊かぁ、久しぶりだな。元気にしてたか?」

「はい、兄者もお元気そうで」

「まあな、戦よりは畑を耕しているほうが落ち着くよ」

 軽やかに笑うその声は、二階堂の態度を気にした風でもなく、柔らかく響いた。

「遠いところ、よく来た。ゆっくりしていけと言いたい所だが、京の太源府より来たのなら、まずそっちを片付けるか」

 島田は近くにいた農夫に鍬を預けると、自身の馬に乗り、桐山と二階堂を伴って北の中心部、元は『燕』の都である洛庸、今は北都と呼ばれる街に戻る。

 元王宮、今では北辺伯の住まいであり役所でもある北宗宮の広間へと桐山と二階堂は通された。

 温かいお茶と、豆を使った菓子を出され、椅子に座って待つことしばし。

 扉が開き、身支度を整えた島田が入室する。

 天位の階色である紫紺の袍は桐山達の物よりも袖が長く、後ろの裾が床に引く程長い。地織模様の白い袴は布地が多いが足首で括ってあり、意外と裾さばきは楽だ。髪を結って、黒絹でできた冠を乗せる。帝である宗谷は同じ型で金細工の冠に黄色の袍を着る。

 懐には白檀の扇、腰には太刀。

 棋士という武官であり、北辺伯という統治文官でもある立場を示す。

 天位の棋士として正装をした島田の後ろには、この地で働く武官、文官が数十人控えている。

 京の太源府とは、帝である宗谷に次ぐ、宰相府のことだ。その使いで正副の二使がきたとは公式の使者。

 天位である島田よりも、下階級であっても正使である桐山が上になる。

「主上よりのお言葉である」

 上座に立った桐山が、塗り箱を島田に差し出すと、島田は恭しくその箱をいただく。

 箱の紐をほどき、中におさめられた書状を開くと溜息を一つこぼした。

「謹んで拝命いたします」

 深々と島田が頭を下げるのに、桐山はなんとなく居心地が悪い思いをした。

 島田開、昌の国にいる棋士の最高峰である天位十人が一人。

 もともと、棋士は武官、文官を兼ねる者が多い。

 先代から宰相位にいる高齢の神宮寺でも、万の駒を動かす。

 また、天位最年長柳原朔太郎は、長く天位に在籍する古参の棋士で変幻自在に駒を動かし、戦時は遊撃担当で平時は祭祀担当。これは年寄を労われと、実務を嫌がったからだ。

 天位筆頭と言われる隅倉健吾、最大級の攻撃力を有し、現在西の残党の殲滅と直轄統治を行っている。

 宗谷の乳兄弟である土橋健司、宮廷の階級には興味がなく、東部を任されながら職人達と一緒に新しい道具作りに熱心で、商工部の取り仕切りをおこなっている。

 攻撃力にいささかムラがあるものの、はまれば圧倒的な強さを持つ辻井武史。普段は服飾、工芸や歌舞など芸術などに力をいれ、河川を使った水運事業と流通を担当している。

 守勢に定評があり持久戦に強い後藤正宗。街道整備、農地や都市開発の予算分配と計画立案を行う。予算案で揉める各省庁と地方役人を黙らせる強面だが、予算分配は合理的で的確との評がある。

 攻撃に偏りがちな面はあるものの、破壊力が大きい藤本雷堂。塩の生産と南の海南部分の商業系を取り仕切る。緑の屋根と朱柱の娼館・酒楼を贔屓しがちだが、正室にがっつりと首根っこを押さえられており、南洋府の主は奥方とも噂される。ただし、豪快で喜怒哀楽のはっきりとした藤本は船乗り達の支持が高く、商家達もうまくさばいているので、羽目をはずさない程度の遊びは周囲から呆れられながらも大目に見られている。

 そして北の地を治める島田開。棋士になるのは幼少の頃から訓練と教育を受けられる裕福な者が多い中、北方山地にある農家の出で、村人からの支援で地位の棋士から指南を受け、京の都で棋士として認められ、一つずつ階位をあげて国の十指である天位になった。

 戦い方は守を得意とするが、攻撃も不得手ということはなく、広い平原でも極地戦でも駒を自在に動かす。先陣を切ることを好む藤本とは違い、二陣や後詰、兵糧などの後方任務を厭うことなく、手堅く勝を取ることが多いといわれる。

 個性的というか、奔放な者が多い天位の中では比較的穏やかで、苦労人という印象があるのは、やはり穏やかな笑顔と、長身痩躯な体型のせいだろうか。

 見るからに武官という威圧を放つ隅倉、後藤、藤本に対して、文官めいた柳原、辻井、島田、土橋。

 彼等は最上治とも言われる帝の宗谷の命令で敵を殲滅する刀であり、土地を治める行政官でもある。

 普通は武官と文官を分けるものだが、昌では棋士というのが戦場に出る武官でありながら、文理と係数に強く、理論的な思考をしているので、戦時は武官、平時は文官として国に仕えている。また、兵士のほとんどが彼らの操る駒であるため、平時でも兵士があまって戦力を持て余すということもない。

 そして、平原で大軍同士の戦でこそ、補給いらずで逃げ出すこともない彼等の駒を使った戦い方は圧倒的な強さを誇った。

 天位10人で20万の兵力を指揮し、地位、上位、中位を合わせれば100万を超える。

 その兵士達は討たれても一晩たてば復活するのだから、生身の兵士を動員している周辺諸国にすれば悪夢でしかない。

 もちろん、他国にも棋士に似た者はいるし、研究もしている。だが、地力に差があり過ぎた。

 天位相手だと、一度は勝てても再度戦えばことごとく潰される。昌の棋士を殺さない限り、兵士は無限に復活し、二度目からは対策を講じて易々とは勝たせない。

 そして、この天位を束ねる帝の宗谷は一人で5万の駒を動かす。首都である京とその周辺を帝一人で防衛できてしまう。宗谷に対して天位十人で挑めば勝てるだろうが、天位の上位者達は宗谷に叛意をもたず、自分の上位者にふさわしいと膝を折り、剣と扇を捧げている。

 急速に国土を6倍まで広げながら、文武両道の棋士達が武力と文治で征服した国を統治しているせいで昌の国には混乱が少ないのだ。

 桐山の目の前で、文治派の筆頭とも言われる島田が一つ溜息をついてから、透かしのはいった拝命書を丁寧にたたみ、塗り箱におさめる。

「すまない、皆。西に配置換えになった」

 島田の言葉に背後に控えていた臣達がざわつく。

「半数は西護府へ移動だ。後任は隅倉さんになる。彼が着任したら、そのまま引き継ぎをおこなってくれ」

「お待ちください!やっとではありませんか。やっと果樹が実をつけ、山間の田畑から収穫できるようになって、民の生活も見通しがたち、これからというのに!」

 昌の北部は鉄がとれたが、『燕』の地は荒れた土地が多かった。山間部は気候が厳しく、雨が少なければすぐに不作となる。狩りも年によって差があり、木材も河を使えなければ運ぶ場所が限られ、飢饉になるたび座していても死ぬだけと、人減らしもかねて戦をしかける国だった。

 その『燕』を統治するために派遣された島田は、まず貧窮作物を育て、果樹を山肌に植え、山羊と鶏を飼い、道路を整備して水路を引いた。田畑を広げながら戸籍を作り、法を整えて敗戦国の民であっても理不尽な扱いをしないことを告知した。

 五年をかけて『燕』を取り込みながら、育てた作物は街道と青江で昌国内に運び、また日用品や衣類、道具類を北の地へと持ち込んだ。

 駒を使っての大規模土木工事。この手の作業が島田は得意なので、開墾やら護岸工事やらを後藤から振られることも多かったが、この北の地ではほぼフル稼働の状態で攻め滅ぼした『燕』の民を慰撫しながら、残る敵対勢力を排除してきたのだ。

 ようやく掌握してこれからだというのに、ここでその功に報いることなく西に配置換えとはと、島田の下で働いてきた北都の棋士や官吏達が理不尽だと肩を震わせる。

「仕方ない。主上からの勅命だ。それに、いままでは貧しかったから大人しくしていたが、豊かになってきて妙な動きをする輩も出てきた。多少税をくすねるぐらいなら可愛いが、国土工事で手抜きや妨害をされたらたまらない。どうも俺は舐められがちだから、隅倉さんに一度締めてもらったほうがいいだろう」

「伯…」

「隅倉さんはああみえて甘い物が好きだから、蔵にある果実の砂糖煮をだしたら喜ぶだろ」

 ゆったりとした口調で島田が笑うのに、官吏達は視線を逸らすように俯いた。

 保存食と販売用にと、果樹が実をつけるようになってから地元民を指導して作り始めた砂糖煮。山肌に植えた3000本の桃の木は開花時期に見事な景観となり、見物客が訪れるようにもなった。

 治安もよくなり、街道も整備され、商人達が荷馬車を引いて行き来する姿も珍しくなくなった。

 ようやく、民が不安そうな顔をしなくなり、春と秋には祭りの声が聞こえるようになったのだ。笑って祝うようになったのだ。

 今までは飢えないようにするのが精いっぱいだったが、次はあれをしよう、これもやろうと、この北都から北斗関に配置された者達で語り合っていたというのに。

「急かすようで申し訳ないが、重田、三角。それぞれ配下の半数をまとめて引継ぎの用意を」

「御意」

「承知いたしました」

 それぞれ二十代から三十代と思われる棋士の二人は、片方は不愛想に、もう片方は愛想よく顔前で腕を組んで頭を下げる。

 パンと島田が手を打つと、広間に控えていた者達が一斉に動き出した。

『島田は優しいから、自分に刃を向けた相手にすら情をかける。情をかける相手を間違えては駄目だ』

 天上天下で唯一人。島田が膝を付きながら仰ぎ見た主。昌を大国へと押し上げた今帝、宗谷冬司。二十になるかならずで即位した帝は、見た目はとても若々しくて線が細く、文治系に見えた。もともと昌の国は自ら攻め込むことをせず、国防を国是としているようなところがあったので、周辺諸国は代替わりを好機とこぞって昌に攻め込んだが、天位十人と地位、上位を巧みに配して各個撃破し、守勢から攻勢に転じて周辺諸国に攻め入った。

 ここで防いだところで、数年もすればまた奴等は来る。何度も相手をするのは面倒だと、天位十人に敵の玉将の首を持ってこいと命じたのだ。

 頼りなげな優し気な風貌に反して、気性は苛烈で報復戦の戦略はえげつない。精緻ともいえる政戦両略を構築し、人を配する。

 前帝が遠い血縁者である冬司を見出し、我が子ではなく他人である彼を後継に指名したとき、国内で反対の声はなかった。

 長く宰相を務める神宮寺が自ら育て、老獪な旧臣達が磨いた宗谷冬司は棋士として突出した才があるだけでなく、『統べる者』としての才があった。絶対的な支配者として玉座に座ったとき、昌の国に仕える天位の棋士を筆頭に百官は皆、膝を付いて頭を垂れ、自らの太刀と扇を新帝である宗谷に対して捧げ持った。

 個人レベルであれば不器用なところがあることを側近くにいったことのある島田は知っている。ただ、敵に対する容赦のなさも、宗谷は徹底していた。

 元が農民である島田は、弱者に対して甘い所があった。自身一人の力ではどうにも覆らないことがあると知っている。

 水利一つ、日照りが続けば上流と下流で揉める。地面に額を擦り付けて頼んでも、上には届かない。身分がなければ、力がなければ、何一つ動かせない。だからこそ、力を得るために島田は都で棋士を目指したのだ。

 弱さを知っているからこそ、彼は力押しせず、時間をかけて戦で荒れた土地と民を慰撫するが、それゆえに彼の甘さに漬け込もうとする輩がいる。

 それに喰われるほど島田は弱くも愚かでもないが、守るべき民相手であるから傷つくのも事実で、宗谷は島田が傷つくのを厭うて西に配置換えをした。

 そうと察しているから、本当にあいつは言葉が足りないと、島田は苦笑する。

 国が違おうと民を殺すことは心が痛む。それでも、自分は棋士なのだ。昌の国を、宗谷を害する者を許せるはずがないものを。

 絶対的な力を持つ統治者ゆえに、歴代最強の帝ゆえに、玉座に座る宗谷はどこまでも孤独だと、島田達天位の棋士達は知っている。

 全てを手にしながら、人ではなく『神』であることを強いられ、それに応え続けている宗谷。

 神ならぬ自分では、その重責を理解することはできないけれど。

 島田が持参した『燕』で初めて収穫した桃の実を嬉しそうに食べていた姿は、島田と同い年とは思えない。

 ほら、袖がよごれると、島田が帝である宗谷の袍の袖を後ろから掴んでやると、指先と口元を濡らしながら桃を齧っていた。

 西は隅倉と辻井が奇襲をかけて一気に王城を落として降伏させたが、地方貴族がそれぞれの領地に立てこもって、局地戦が続き、隅倉が一つ一つ潰すことになった土地だ。

 きっと、戦で農地も民も疲弊し荒れている。

 その地を立て直せということかと、島田はぐっと腕を回す。

 京には、西でとれた麦と米でも送ろうか。

「ご苦労だったな、桐山、坊。二人はこれから京に戻るのか?」

 柔らかな笑みを浮かべる島田の問いに、慌てて桐山が膝をつく。

 階位でいえば4つ違うのだ。使者としての役目を果たしてしまえば、同等などおこがましすぎる。

 そして、彼の部下達の態度を見ても、島田がどれほどこの地の統治に力を注いでいたかわかる。その地と功績を取り上げられて荒れた西への配置換えというのに、この人はそのことについての不満を欠片もみせない。

「いえ、僕達は、このまま島田伯について西に。京への連絡と報告の任につきます」

「ならば、これからよろしく頼む」

 長い後ろの裾を左腕にかけて歩きだした島田の後ろを、桐山と二階堂は慌てて追いかけた。

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